《白馬視点》
やはり黒羽君は、僕に子ども扱いされていた事が気に入らなかったんだろうか。
同年代の人々よりも子どもらしさが残る彼の事が心配なのも、リスの様に可愛らしいと思ったのも本心だ。
だけど、それを伝えてしまうと、黒羽君は怒ったり不機嫌になってしまう……そのまま言うのが駄目なら、どうやって気持ちを伝えたらいいのだろう。
年相応の姿の彼も、純白を纏っている時の彼も。いつだって、僕は彼から目が離せなかった。
最初こそは正義感と好奇心の方が勝っていたのだが、次第に別の感情が混ざるようになっていく。
黒羽君には、ずっとぼくの隣に居てほしい。他の人と楽しそうにしていると、嫌な気持ちになる。君が何のために何を探しているのか、僕に打ち明けてほしい。それがどんな理由であろうとも、僕は君を受け入れたい。
君が目的を果たして罪を償うというのなら、あらゆる面でサポートしよう。逃げてしまうというのなら、地の果てだろうと追いかけてみせよう。
工藤君と服部君との話があらかた終わり、二人は工藤優作さんに現状報告をしてくると言って、部屋を出ていった。
先に眠っていた黒羽君の様子を見ると、先ほど見た時とは少し違い、どことなく辛そうにしている気がする。
シーツを強く握りしめて身を縮こませ……まるで何かに耐えているかのようだ。
「…………、ゃ……」
黒羽君が何か小さく呟いたが、はっきりとは聞こえなかった。
少しでも気が紛れればと思って、彼の頭を優しく撫でる。
君の悪夢の正体が分かれば、追い払ってあげる事が出来るかもしれない。
こんなに辛そうにではなく、もっと安心して穏やかに眠れるようにしてあげたい。
同年代の少年たちと比べると細身であるその体に、一体どれだけの傷が残っているのだろう。
君の親友になる事ができたら、僕は君の罪も傷も痛みも苦しみも、全部抱きしめて伝えたい。
もう大丈夫だと、僕を頼ればいいと、ずっと一緒に居ると。
君の涙も嘆きも、全部僕の中に流してしまえばいい。僕は欲しいんだ、君を形作るもの全てが。
どうしようもなく彼を求めてしまう……誰にも奪われたくない、渡しはしないという激情と、彼が傍に居るだけで感じる幸福感。
こんな気持ちを感じるのは、生まれて初めての事だ。どうして君はこんなにも、僕の思考を狂わせてしまうんだろう。