なんでこうなってんだ。
帰りの車の中でうたた寝してしまった俺は、予想外の場所で目を覚ました。
まだ車内だと思っていたのに、実際は見慣れない部屋のベッドの中にいるなんて、正直なところ混乱している。
部屋の造りや装飾品からして、白馬の家みてーだけど……。
頭の上に疑問符を浮かべながらも、現状を把握するために、起きてた時の事を思い出す。
俺は色々あった二泊三日の旅行の帰りで、車の揺れとクーラーの冷風が絶妙に心地よく、うたた寝していただけのはず。
その時の景色は、まだ山の麓だったはずだけど……その間の記憶がないって事は、もしかして俺、帰りの数時間がっつり寝てたのか!?
ていうか今回の俺、寝すぎじゃね!?
初日のは狸寝入りだったからまあいいとしても、昨日は抱き枕にされつつもしっかり寝たと思うし……。
もしかして、思ってた以上に疲れてて、体に負担がかかってたんかな。いろんな意味で疲れる旅ではあったし。
俺の荷物が部屋の隅に置かれているから、あの中では俺と一番関わりが深いだろう白馬の家に、俺を下ろしていったのかもしれねーけど……。
いや、それなら起こしてくれても全然よかったのに。
まさか俺、起こしても起きないくらい熟睡してたのか!?
油断した、なんてレベルじゃねーぞコレ……。
「黒羽君? 起きたのかい?」
軽いノックの後に、少し遠慮気味に白馬が入ってくる。
いや、オメーの家なら別に遠慮しなくていいだろ。
「東都についても起きなかったし、君の家は今誰も居ないと言っていたから、僕の家で降ろしてもらったよ。……黒羽君、正直に答えてほしいんだけど……もしかして、ずっと具合が悪かったのかい?」
「は? なんで?」
「旅行中、何度か辛そうにしていただろう? 無理をしていたんじゃないかと思って……」
「いや、あれは……」
怪奇現象のせいだ、とは流石に信じねーだろう。
探偵連中ってのは、科学で証明できない事は否定しがちだもんな。
「……ちょっと調子に乗りすぎて、疲れただけだっての」
「本当に?」
「嘘ついてどーすんだよ。熱とか咳だって出てねーだろ」
「そうだけど……」
そう言っても、白馬は納得していないような表情だ。
「てか、着いたなら叩き起こせばよかったのに」
「そんな酷い事は出来ないよ」
「…………なぁ、白馬って、俺に甘くねーか?」
「えっ? そうかな?」
「そうだよ。普通は家に着いたぞって起こすとこだぜ?」
「でも……なんだか起こすのが可哀想だったし……」
可哀想って……それこそ、ちっこい子どもじゃねーんだから。
俺だってそれなりに身長あるんだし、運ぶの大変だっただろ……いや、まてよ。
「なあ、誰が俺をここまで運んだんだ?」
「僕だけど?」
「それなら尚更起こせよ。俺だってけっこう重いんだぜ?」
「え? とても軽かったよ?」
軽かったって……そりゃお前に比べれば、悔しいが俺の方が軽いだろうけど、「とても」なんてつけるほど中身スッカラカンじゃねーぞ。
「……まあいいや、俺、帰る」
「どうして? 泊まっていきなよ」
「なんでだよ。もう歩いて帰れる距離だし、着替えもねーし」
「でも、家で一人の時に調子が悪くなったら、大変だよ?」
「ならねーっての。もう山ん中じゃねーんだし……」
そこまで言って、ふと気づく。
さっきホテルで聞いたヌシっての、まさか追いかけてくるタイプじゃないよな……?
ホラーでよく見る展開だけど、怪異から逃げて遠くにある自宅まで戻って、もう安心だと思ったら憑いてこられてたってのもあるし……。
「……なあ白馬。もし俺が、いきなり居なくなったらどうする?」
「それは、どこかに逃走するという意味かい?」
「ちげーよ。なんというか、もっとオカルト的な話。もしも俺が、得体の知れない相手に連れて行かれたら」
急にこんな話をしたら、きっと白馬は非科学的だと言って呆れるんだろう、と思っていたけれど。
「それは、相手によって考えないといけないね」
「考える? 何を?」
「ほら、霊体のような相手なら除霊のプロの人を呼ぶべきだし、実体があっても不可思議な力を使ってくるなら、対処法も変わってくるだろう?」
「お前、そういう話も真面目に考えるんだな」
「非科学的ではあるけれど、絶対にありえないとは言い切れないよ。いくら科学によって文明が発達した現代でも、人類が解明できていない事なんてまだたくさんある。宇宙とか深海魚とかね」
「……宇宙はともかく、ギョの話はヤメロ」
「ふふ、ごめんごめん」
白馬は笑いながら軽く謝ってくるが、深海ではなく深海魚なんてわざわざ言うあたりは、俺に対する嫌がらせなんだろう。
「で、話は戻るけれど。どこまで対処できる相手なのかを把握して、解決策を考えないといけないって事だよ」
「じゃあ、全く何も分かんねーような相手だったら?」
「そうだね、一先ずは……聖水や清めの塩が効くなら、容赦なく浴びせるけど」
ん? 容赦なく?
「あるいは銀の弾丸とか、破魔矢とか……火が効く場合も多いようだし、火炎放射器とかもあるといいかもね」
「いや、「いいかもね」じゃねーよ。だんだん物騒になってんじゃん」
「え? だって相手は、黒羽君に害をなそうとしているんだよね? しかも人間じゃないんだよね?」
白馬は「何を言ってるんだ」みたいな顔で俺を見てくるが……何を言っているんだ、はこっちのセリフだろ!!
相手が人間じゃなかったら容赦しないのかよお前!?
「それに、人間じゃないって事は、君がどんな目に合うか余計に分からないじゃないか。追跡さえ出来なくなるかもしれないんだよ?」
「そりゃ……そうかもしれねーけど」
思いの外に真剣に話す白馬を見て、やっぱり言うんじゃなかったと少し後悔した。
絶対否定してくると思ったのに、逆に本気になられても、ちょっと困るというか。
「ねえ、黒羽君。僕は君が眠っている間に、色々考えたのだけれど……僕の君に対する気持ちが、本当は何なのか分かった気がするんだ」
「は? 何のこと……」
「君はまだ、分からないままでいて」
そう言って白馬は俺の髪を撫でて、少し切なそうに微笑んだ。
腹立つくらい顔の良い奴め、なんて思いつつも、俺の頭の上では再び疑問符が出現し、インテロゲーションマークのバーゲンセール状態になっている。
「なにか飲み物を用意するから、少し待っていてね」
「…………おう……」
さすがにいろんな意味で帰る気が失せたので、こうなったら白馬の所で食い物せがんで、今日の食費を浮かせてやろうと開き直る。
どうせ誰も居ねーんだから、文句を言われる事も無ければ心配される事も無い。
泊まってくなら一日分の電気代も浮くしな……そういえば、なんかちょっと寒い。
この部屋、クーラーがついてるけど、設定は27℃の弱……寒く感じる様な風量じゃないのに……。
「おまたせ、黒羽君」
違和感を感じていたら、白馬が戻ってきた。
飲み物を用意するとか言ってたけど……なんか変わった匂いがするな。
「なにそれ」
「アンジェリカをベースに、ペパーミントとカモミールをブレンドしたハーブティーだよ。体に優しい効果があるから、飲んでみて」
「ふーん?」
ふわりと湯気の立つカップを受け取り、一口飲む。うん、苦手な味ではないな。
暖かい液体が喉を通って、体に染み込むような熱を感じると同時に、俺の中にこびりついていたような寒さが、溶けるように無くなっていった。
さっきまでの違和感も無くなり、クーラーの風もちょうどよく感じる。
不思議に思っていたら、白馬がベッドのサイドテーブルに、乾燥した黄色い花と葉っぱの入った瓶を置いた。
「それは?」
「ヘンルーダのポプリだよ。防虫効果があるんだ」
今は夏だし、洋風蚊取り線香ってとこか?
こいつの家って、いちいち洒落たもんがあるんだな。
「そうだ、黒羽君。今回の旅行で撮っていた写真を、僕の方にも送ってもらえるかい? 家の皆が見たがっているんだ」
「いいけど」
鞄からスマホを取り出し、白馬のスマホに写真を送る。
ホテルに着いた時や吊橋を渡っている時、ミニブタたちに突かれてたり乗馬をしたりしてる時の写真だが……。
笑えるやつを撮ってやろうと思ってたのに、やたらといい写真しかねーな。
いや、これは俺のカメラの腕がいいからだ。そういう事にしておこう、なんか悔しいし。
「そういや、白馬もなんか撮ってなかったか?」
「いろいろ撮ったよ。僕のお気に入りはこれかな」
そう言って見せられたのは、モコモコのウサギたちに囲まれて、満面の笑みで幸せそうにしている、俺の写真。
「……次の服部のやつの方が面白いんじゃね? アヒルに追っかけられてるやつ」
「これも悪くないけれど、僕は面白写真を求めていたわけじゃないからね」
白馬は柔らかく笑って、お気に入りだと言った俺の写真を大切そうに見つめていた。
………………なんか、ホントに調子狂うな。
その後、白馬の親父さんである警視総監と一緒に飯を食う事になったり、ばあやさんの「探ぼっちゃまコレクション」という名のアルバムを見せてもらう事になったりと色々あったが、次の日には無事に自宅へと帰った。
たまった洗濯物を回して旅行の片づけをし、中森家へのお土産を渡しに行ったりしているうちに、時間は少しづつ過ぎていく。
ふと外を見ると、眩しい青色に白い入道雲という絵に描いたような夏の空に、横切っていく飛行機雲。
手放しで楽しかった、とは言い切れない旅行だったけれど……それでも少しだけ、終わって寂しいような気がした。
《終わり》
帰りの車の中でうたた寝してしまった俺は、予想外の場所で目を覚ました。
まだ車内だと思っていたのに、実際は見慣れない部屋のベッドの中にいるなんて、正直なところ混乱している。
部屋の造りや装飾品からして、白馬の家みてーだけど……。
頭の上に疑問符を浮かべながらも、現状を把握するために、起きてた時の事を思い出す。
俺は色々あった二泊三日の旅行の帰りで、車の揺れとクーラーの冷風が絶妙に心地よく、うたた寝していただけのはず。
その時の景色は、まだ山の麓だったはずだけど……その間の記憶がないって事は、もしかして俺、帰りの数時間がっつり寝てたのか!?
ていうか今回の俺、寝すぎじゃね!?
初日のは狸寝入りだったからまあいいとしても、昨日は抱き枕にされつつもしっかり寝たと思うし……。
もしかして、思ってた以上に疲れてて、体に負担がかかってたんかな。いろんな意味で疲れる旅ではあったし。
俺の荷物が部屋の隅に置かれているから、あの中では俺と一番関わりが深いだろう白馬の家に、俺を下ろしていったのかもしれねーけど……。
いや、それなら起こしてくれても全然よかったのに。
まさか俺、起こしても起きないくらい熟睡してたのか!?
油断した、なんてレベルじゃねーぞコレ……。
「黒羽君? 起きたのかい?」
軽いノックの後に、少し遠慮気味に白馬が入ってくる。
いや、オメーの家なら別に遠慮しなくていいだろ。
「東都についても起きなかったし、君の家は今誰も居ないと言っていたから、僕の家で降ろしてもらったよ。……黒羽君、正直に答えてほしいんだけど……もしかして、ずっと具合が悪かったのかい?」
「は? なんで?」
「旅行中、何度か辛そうにしていただろう? 無理をしていたんじゃないかと思って……」
「いや、あれは……」
怪奇現象のせいだ、とは流石に信じねーだろう。
探偵連中ってのは、科学で証明できない事は否定しがちだもんな。
「……ちょっと調子に乗りすぎて、疲れただけだっての」
「本当に?」
「嘘ついてどーすんだよ。熱とか咳だって出てねーだろ」
「そうだけど……」
そう言っても、白馬は納得していないような表情だ。
「てか、着いたなら叩き起こせばよかったのに」
「そんな酷い事は出来ないよ」
「…………なぁ、白馬って、俺に甘くねーか?」
「えっ? そうかな?」
「そうだよ。普通は家に着いたぞって起こすとこだぜ?」
「でも……なんだか起こすのが可哀想だったし……」
可哀想って……それこそ、ちっこい子どもじゃねーんだから。
俺だってそれなりに身長あるんだし、運ぶの大変だっただろ……いや、まてよ。
「なあ、誰が俺をここまで運んだんだ?」
「僕だけど?」
「それなら尚更起こせよ。俺だってけっこう重いんだぜ?」
「え? とても軽かったよ?」
軽かったって……そりゃお前に比べれば、悔しいが俺の方が軽いだろうけど、「とても」なんてつけるほど中身スッカラカンじゃねーぞ。
「……まあいいや、俺、帰る」
「どうして? 泊まっていきなよ」
「なんでだよ。もう歩いて帰れる距離だし、着替えもねーし」
「でも、家で一人の時に調子が悪くなったら、大変だよ?」
「ならねーっての。もう山ん中じゃねーんだし……」
そこまで言って、ふと気づく。
さっきホテルで聞いたヌシっての、まさか追いかけてくるタイプじゃないよな……?
ホラーでよく見る展開だけど、怪異から逃げて遠くにある自宅まで戻って、もう安心だと思ったら憑いてこられてたってのもあるし……。
「……なあ白馬。もし俺が、いきなり居なくなったらどうする?」
「それは、どこかに逃走するという意味かい?」
「ちげーよ。なんというか、もっとオカルト的な話。もしも俺が、得体の知れない相手に連れて行かれたら」
急にこんな話をしたら、きっと白馬は非科学的だと言って呆れるんだろう、と思っていたけれど。
「それは、相手によって考えないといけないね」
「考える? 何を?」
「ほら、霊体のような相手なら除霊のプロの人を呼ぶべきだし、実体があっても不可思議な力を使ってくるなら、対処法も変わってくるだろう?」
「お前、そういう話も真面目に考えるんだな」
「非科学的ではあるけれど、絶対にありえないとは言い切れないよ。いくら科学によって文明が発達した現代でも、人類が解明できていない事なんてまだたくさんある。宇宙とか深海魚とかね」
「……宇宙はともかく、ギョの話はヤメロ」
「ふふ、ごめんごめん」
白馬は笑いながら軽く謝ってくるが、深海ではなく深海魚なんてわざわざ言うあたりは、俺に対する嫌がらせなんだろう。
「で、話は戻るけれど。どこまで対処できる相手なのかを把握して、解決策を考えないといけないって事だよ」
「じゃあ、全く何も分かんねーような相手だったら?」
「そうだね、一先ずは……聖水や清めの塩が効くなら、容赦なく浴びせるけど」
ん? 容赦なく?
「あるいは銀の弾丸とか、破魔矢とか……火が効く場合も多いようだし、火炎放射器とかもあるといいかもね」
「いや、「いいかもね」じゃねーよ。だんだん物騒になってんじゃん」
「え? だって相手は、黒羽君に害をなそうとしているんだよね? しかも人間じゃないんだよね?」
白馬は「何を言ってるんだ」みたいな顔で俺を見てくるが……何を言っているんだ、はこっちのセリフだろ!!
相手が人間じゃなかったら容赦しないのかよお前!?
「それに、人間じゃないって事は、君がどんな目に合うか余計に分からないじゃないか。追跡さえ出来なくなるかもしれないんだよ?」
「そりゃ……そうかもしれねーけど」
思いの外に真剣に話す白馬を見て、やっぱり言うんじゃなかったと少し後悔した。
絶対否定してくると思ったのに、逆に本気になられても、ちょっと困るというか。
「ねえ、黒羽君。僕は君が眠っている間に、色々考えたのだけれど……僕の君に対する気持ちが、本当は何なのか分かった気がするんだ」
「は? 何のこと……」
「君はまだ、分からないままでいて」
そう言って白馬は俺の髪を撫でて、少し切なそうに微笑んだ。
腹立つくらい顔の良い奴め、なんて思いつつも、俺の頭の上では再び疑問符が出現し、インテロゲーションマークのバーゲンセール状態になっている。
「なにか飲み物を用意するから、少し待っていてね」
「…………おう……」
さすがにいろんな意味で帰る気が失せたので、こうなったら白馬の所で食い物せがんで、今日の食費を浮かせてやろうと開き直る。
どうせ誰も居ねーんだから、文句を言われる事も無ければ心配される事も無い。
泊まってくなら一日分の電気代も浮くしな……そういえば、なんかちょっと寒い。
この部屋、クーラーがついてるけど、設定は27℃の弱……寒く感じる様な風量じゃないのに……。
「おまたせ、黒羽君」
違和感を感じていたら、白馬が戻ってきた。
飲み物を用意するとか言ってたけど……なんか変わった匂いがするな。
「なにそれ」
「アンジェリカをベースに、ペパーミントとカモミールをブレンドしたハーブティーだよ。体に優しい効果があるから、飲んでみて」
「ふーん?」
ふわりと湯気の立つカップを受け取り、一口飲む。うん、苦手な味ではないな。
暖かい液体が喉を通って、体に染み込むような熱を感じると同時に、俺の中にこびりついていたような寒さが、溶けるように無くなっていった。
さっきまでの違和感も無くなり、クーラーの風もちょうどよく感じる。
不思議に思っていたら、白馬がベッドのサイドテーブルに、乾燥した黄色い花と葉っぱの入った瓶を置いた。
「それは?」
「ヘンルーダのポプリだよ。防虫効果があるんだ」
今は夏だし、洋風蚊取り線香ってとこか?
こいつの家って、いちいち洒落たもんがあるんだな。
「そうだ、黒羽君。今回の旅行で撮っていた写真を、僕の方にも送ってもらえるかい? 家の皆が見たがっているんだ」
「いいけど」
鞄からスマホを取り出し、白馬のスマホに写真を送る。
ホテルに着いた時や吊橋を渡っている時、ミニブタたちに突かれてたり乗馬をしたりしてる時の写真だが……。
笑えるやつを撮ってやろうと思ってたのに、やたらといい写真しかねーな。
いや、これは俺のカメラの腕がいいからだ。そういう事にしておこう、なんか悔しいし。
「そういや、白馬もなんか撮ってなかったか?」
「いろいろ撮ったよ。僕のお気に入りはこれかな」
そう言って見せられたのは、モコモコのウサギたちに囲まれて、満面の笑みで幸せそうにしている、俺の写真。
「……次の服部のやつの方が面白いんじゃね? アヒルに追っかけられてるやつ」
「これも悪くないけれど、僕は面白写真を求めていたわけじゃないからね」
白馬は柔らかく笑って、お気に入りだと言った俺の写真を大切そうに見つめていた。
………………なんか、ホントに調子狂うな。
その後、白馬の親父さんである警視総監と一緒に飯を食う事になったり、ばあやさんの「探ぼっちゃまコレクション」という名のアルバムを見せてもらう事になったりと色々あったが、次の日には無事に自宅へと帰った。
たまった洗濯物を回して旅行の片づけをし、中森家へのお土産を渡しに行ったりしているうちに、時間は少しづつ過ぎていく。
ふと外を見ると、眩しい青色に白い入道雲という絵に描いたような夏の空に、横切っていく飛行機雲。
手放しで楽しかった、とは言い切れない旅行だったけれど……それでも少しだけ、終わって寂しいような気がした。
《終わり》