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《工藤視点》


 白馬との話し合いが一段落した後、俺と服部は自分たちの部屋から少し離れた所にある、父さんたちの泊まる二人部屋に向かっている。
 他の宿泊客は各々の部屋でゆっくりしているのだろう、近くを行き来するような人影は無い。

「……なあ服部、俺の華麗で野暮な推理を聞いてくれるか」
「おう、なんや」
「俺、黒羽とは初対面だけど、別の姿で会ってると思う。むしろ俺の予想通りなら、あいつにはものすごく助けられてきた」
「……奇遇やな、俺もそう思っとった」
「だが、俺の推測だけで証拠も無いし、現行犯になる事も無さそうだから、今回はあいつに関してはとやかく言うつもりはねえ。それより白馬の方なんだが、あいつ本当に、黒羽と親友になりたいと思ってるのか?」
「せやな、話聞いとったら、なんか重ぉなってきたと思ったけど」
「俺たちが羨ましいとか言ってたけど、あいつの嫉妬の眼差しは丸出しだったよな」
「ああ、そのくせ黒羽を見とる時は、えらい幸せそうにしとったし」
「やたらと子ども扱いするのは庇護欲からだろうが、同時に執着心と独占欲も混ざってるよな」
「それやなあ……あいつ今まで友達おらんかった言っとったで、感情の違いが分かっとらんのとちゃうか」
「だよなあ」

 服部と二人で答え合わせして、確信した。
 白馬が黒羽に抱いている感情、その正しい名称は。

「……友情ではねーよな」
「ああ……恋心やな」